
前回に引き続き、「もしセッションや講義等の場で、起業家さんや表現者さんから質問されたらどう答えるか?」を綴ってみるシリーズです!
今回は、
『なんだか最近、頭打ち感があるんですよね・・・』
『どうやったらこの感じ、打破できる?』
…このような質問や相談があったら、私はこの問いをどう捉え、どう思考を伴走するかについて書いてみます。(※これはそのまま、自分で思考整理する際、どのようにセルフファシリテーションできるか?の助けにもなります^ ^)
■前提 - 問いの捉え方
まず、この問いを投げかけてくる人の多くは(少なくとも私と縁のあった人達は)、生きることに真摯な人です。何もしてこなかった人は頭を打つ感覚自体が起こりませんから、これまでそれなりに努力も成果も積み上げてきたり、もがいて来たり、試行錯誤を積み重ねて来たり、そんな人達。
つまり「止まっている人」ではなく、
むしろ「ちゃんと進んできた人」。
ですから、この相談を聞いた瞬間に、「それはマズい状況だ」「課題を解決せねば」とは思いません。シンプルに、
これまでのやり方で行けるところまでは、もう来たんだな!
と、捉えます。
頭打ち感とは、能力不足や努力不足のサインというより、これまで有効だった思考や行動の型が、そろそろ合わなくなってきた、というお知らせなんですね。
恐らく多くの人がしてしまうのは、「もっと頑張れば抜けられるはずだ」「自分の何かが足りないのではないか」と、無意識に不足に意識を向け、闇雲にギアを上げてしまうこと。
ですが、焦りや自己否定が強い状態で頭を使うと「正解探し」や「失敗回避」に偏り、視野は狭くなる一方です。第一に必要なことは、この問いを発している自分自身を捉え直し、編み直してゆく思考作業なのです。
つまり、私の基本姿勢は、
「頭打ち感」を、解消すべきバグや問題としてではなく、現在地を教えてくれる「サイン」として扱う
こと。これ以外にありません。(※この立脚点に慣れ親しみすぎると、「何かしらのチャンス到来だな」「転換点が来たな」など、自然と「良い予感」を感じるようにもなります^ ^)
この前提に立つことで、「何がズレ始めているのか」「どこまでは、もう十分にやったのか」「どうして行きたいか」を一緒に見ていこう。そんな構えで、思考の伴走を始めることができるんですね。
これが確認できれば、この問いに対してすべきことが単に「どうやって打破するか?」を考えることでは無いことにすんなりと理解が及ぶかと思います。
確認して行きたいのはむしろ、
その「頭打ち感」は、本当に「打破すべき問題」なのか?
という点なのです。
頭打ち感の実体は、人によってもその時々によっても全く異なります。ここを見誤ったままでは、進めば進むほどズレて行ってしまいます。
■「絡まり」と「向かいたい方向性」を、見える化する。
では、頭打ち感の実体を見極めるためにどうすれば良いか?
ここからは個別性高く、
「気がかり」「課題感」「違和感」「思い込み」など、その人をストップさせている内面の絡まりと、「実は手に入れたいもの」「その先に向かいたい方向性」といったゴールの両面を、丁寧に取り出して行きます。
コツは、それらをできるだけ網羅的に、余すことなく言語化すること。箇条書きで良いので、途中で取捨選択したりジャッジを加えず、本音を取り出しきると、この問いに関連する思考の全貌があらわになって行きます。
よく見る例をいくつかモチーフとして挙げてみますので、イメージの一助にしてください。
■コンサルタント・30代
「頑張らないと!」が口癖。謙虚でひたむきで、努力家なキャラクター。人脈も広くビジネスもある程度順調だが、常に「自分は何か足りていないに違いない。」と不足感がつきまとい、度々”頭打ち感”を感じている。
→ この場合、次に必要なのは「さらに伸びること」ではなく、既に到達している地点を、きちんと自分で引き受けることかもしれません。「自己受容」が次の目標として浮かび上がることも多い。自己理解と他者評価にズレが生じやすい人達でもあるため、そこを課題設定する人も多いですね。
■起業家・40代
「成長=正義」という価値観の人。高い負荷とスピードで、成果を出してきた自負もある。資本主義文脈には馴染みやすい性格も自覚しており、事業の数値面というより精神面での成熟に課題感あり。年齢的なものもあるのか、若い頃には感じなかった成長鈍化を感じている。
→ この場合、「ゆったり、ペースを落とすことで見える景色は?」「成長以外の価値は?」といった、これまでとは別軸での目標設定を行うことで頭打ち感と向き合うことになるケースが多いですね。刺激依存という課題や、同じペースでは次の質に行けないという学びと直面することも。
■ものづくり作家・50代
シンプルに学び欲や成長欲が豊かで、創作活動も多岐に渡っている。色々やってきたからこそ、頭打ち感を感じており、新たなフィールドへの展開を希求している人。
→この場合は、相談自体に深刻さはさほど無かったりしますね。とはいえ、「今の選択肢の外にある可能性に立つには?」とか、「視点を変える・視野を広げるには?」といった、クリエイティブな課題と向き合うことになるので、次の一歩の具体的な目標設定と行動面への橋渡しが鍵を握ることが多いです。
ほんの一例ですが、いずれのケースもポイントはやはり、頭打ち感を闇雲に「打破すべき」と努力に走る前に、ご本人の「現在地」を丁寧に可視化する機会に変えることです。
そうすれば、自然と次に向かいたい方向性は必ず見出されますし、方向性さえ決まれば、次に取り組むべき課題やタスクは必然的に決まって来るのです。
■まとめ - 今と未来の解像度を上げよう!
頭打ち感を感じているとき、多くの人は真っ先に「打開策」を模索します。ですが、その前に最も考えるべきことは「どうしていきたいか?(=ゴール)」の方なんですね。
大切なのはゴール。何をするか?はその後。そのために、まずは現在地を明らかにする。この型です。
…言われてみれば当然のことですが、精緻に導き出すには絡まり合った内面の取り出しがなかなか困難なテーマの一つでもありますね。
頭打ち感は、次なる成熟プロセスの入口に立った証拠。
ご自身で事業や活動をなりわいにしている方ほど、「自分の変容がそのまま、提供価値の質的転回を呼び込む。」と熟知しています。現在地と未来像を、ぜひ解像度高く扱ってみてください。
ちょっとした思考のコツが、何か1つでも参考になれば幸いです。
(おわり)
*このコラムは、ここ数年の自分自身の「飽和感」つまりは「頭打ち感」を脱したいがために、好みのスタイル(個の問いに答える)に終始するでもなく、かと言ってノウハウ的に体系化するでもなく、絶妙なところから「問いに回答し、語る」ことに挑戦すべく綴り始めたコラムです。
理解に苦しむ部分や欠落や盲点のご指摘、またはこんな質問ならどう答える?などありましたら、ぜひぜひお寄せください^ ^