
今回の問いへの応答シリーズはこちら!
Q.承認欲求の強い人と、どう関わるべき?
なお、このコラムは作り手・表現者さん向けのセッションや講座でよく出る話題をテーマにしているので、親子関係や教育現場ではなく、仕事を中心とした大人同士の関わり合いを想定して書きますね。
■問いの設定
まず、この問いは一見「他人の扱い方」に思えますが、問うべきは互いの関係性やエネルギー循環についてだ、というのが私の立場であり、今回おすすめしたいことです。
承認欲求が強い人といっても実際色々ですけれど、この手の相談事の話題になるようなケースって、結局のところ他者の「幼児性」とどう付き合うか?ってことに帰着すると思うんですよね。
私のセッションや講座に参加される方って、私ほどズル賢さが無いというか(笑)、とっても誠実な方が多いのですが、実直で誠実な人ほど、相手の要求に「応えよう」「理解しよう」「受け止めよう」とする。そこだけ見ると”良いこと”かもしれませんが、それが癖になり過ぎていると、トータルで俯瞰した際、それ以外の対応ができず、結果的に相手の要求に振り回されていることがとても多い。
"タイプ別・困ったさんへの声かけ例!"みたいなものを期待して記事を読み始めた方は遠慮なくここで離脱頂きまして(笑)、ここで問うべきは、他人の扱い方ではなく、「健全でない関係性」や「目的遂行において不具合が起きていること」の方。ここをまず見極めてみてくださいね。
例えば、
■物販事業オーナーAさん × チームメンバーBさん
Bさんはとても熱心で、成果も出している。ただ、頼んでいない作業まで抱え込む/必要以上に作り込む/報告時に「ここまでやりました」と強くアピール。
→Bさんの承認欲求をどうするか、ではなく、AさんがBさんの価値を証明し続けないと成果が出ない構造になっていることが課題ですよね。成果を生み続けるためには、一方的に承認を与え続ける関係ではなく、判断や価値創出が自走する循環構造へ移行する必要があります。役割や期待値の見える化、アウトプットの基準設定など色々と工夫できそうです。
■ボディワーカーCさん × クライアントDさん
Dさんは施術効果も感じ何度もリピートしてくださっているが、体の状態以上に「大変だった話」を多く語る。Cさんが共感を示し「分かってもらえた」と感じることに満足感を得るが、生活習慣の改善には繋がらない。
→Cさんの内面云々ではなく、承認欲求を満たすことによる依存関係について扱うべきかも。それをよしとしているなら話は別ですが、体調改善や自立を目的とするのであれば、共感の提供で完結しないよう、身体感覚への気づきや日常行動への接続を促すような関わり方へシフトする必要があります。対話や場の設計で改善できそうです。
■テック事業経営Eさん × 協業メンバーFさん
Eさんは、若手ながら推進力の高いメンバーFさんを、ゆくゆくプロジェクト全体の責任者に据えたいと思っている。ただ、Fさんの「人より秀でて認められたい」という想いが強すぎて判断にブレが出ることを課題に思っている。
→問題は承認欲の有無ではなく、現状のFさんの外部依存的な意志決定基準のままだと、事業全体の循環を阻害するということの方ですね。責任者に据えるには、判断基準の共有やフィードバックの質を変えるなど環境面の設計調整が必要そうです。また、本人の意志がある場合、育成という関わり方も選択肢に。
…など。最後のケースのように、後進育成など真正面から当人の承認欲求を課題視した方が良いケースも当然あるかと思いますが、合意なく毎回それを引き受けている人・他者の内面に踏み込み過ぎている人が、このテーマで迷います。本人が未熟さからどう抜けだすかということと、事業や活動推進において「その人と、どうなっていきたいのか?」「その人と、何を生み出してゆきたいのか?」とは切り分けて考える必要がありますね。
■「承認」をどう扱うか。
承認欲求の強い人との関わりに迷いが出る理由は、端的に自分の中での“承認”の扱いが未定義だからです。相手どうこうの前に、自分自身の前提やスタンスにおいて、まだ何かしら決めきれていないことがある時、人は判断に迷います。ですから、この問いは相手との関わり方を決める問いであると同時に、自分自身の“承認に関する哲学”を明らかにする問いでもある、ということです。
一般的に、承認欲は「他人から認められたい」「自分を価値ある存在として肯定したい」という欲求のことを指しますよね。マズローやその他学問的見解を引くまでもなく、「いかにして他者依存の承認から、自分自身による承認へと成熟させていくか」というプロセスが重要視されることくらい、読者様の中にもイメージがあるのではないかと思います。一方で、年齢さえ上がれば誰もが「承認欲求と折り合いがついている」わけでもなさそうだ(いや、結構な人がこじらせているよね?)、ということもまた、多くの人の知るところ。
仕事柄、日々人様の内面に深い部分で立ち会いますが、経験値や立場や生い立ちに関わらず、ほとんどの人が、何らかの承認欲求の起こりと共に生きて暮らして、働いているように思います。(※ごく稀に、承認欲とは無縁なんだろうなと思う人も確かにいますが。)
重要なことは、承認という概念に振り回されている人とそうで無い人とは、明確に違いがある、ということ。その差を分けるのが、自分の中で「他者・自己の”承認”について、自分なりに方針を持てているかどうか」です。
お互いへの尊重をベースとした相互承認的な(お互いに承認を応答させ合う)関係というものがあるとして、事例に出て来る人達は承認が一方通行です。求めるだけ、または与えるだけ。これって、幼い子どもと親の関係のモチーフですよね。関係性や環境面を設計し直したりと一通りやってみてなおここから動かせないなら、根本から境界を引き直すことや、深く関わらない・距離を置く等の判断も必要でしょう。
他人の承認欲求をどう扱うかは、操作ではなく選択であり、設計です。 自分がどの前提に立って、人前に立ち現れるのか。ここが未定義だと、判断が揺れ続けるか、歪んだ親子関係に固着するかのどちらかです。
自分なりの方針を持つためには、
■承認とは、100%個人の認識(主観)の中で起きる出来事である、という理解
■他者の内面で起こることは、コントロール対象外であるという理解
■他者承認と、自己価値の問題を切り分けて考えられること
■承認(Approval)と応答(Response)とを区別して扱えること
■自分が担う役割と、担わない役割の線引きを持っていること
…などが必要になるでしょう。
何が正解ということではなく、「自分はどんな在り方で、目の前の人と関係をつくりたいのか?」「自分が本当に達成したいことの中で、この人と共に、どう在りたいか?」。ここを扱わない限りずっと、相手の欲求に応えるべきか、離縁すべきかの短絡的な二択で迷い続けます。
参考までに、私にとっての承認とは何かと問われたとしたら、それは「取り組みにおける関係性において、相互に生じうる副産物の一つ」です。それ自体を目的にすることはなく、過度に重要視もしない。 ただし、時と場合・ゴール・相手に応じて、関係性の中で適切に丁寧に扱うべき事象である、という感じ。この前提に立っていると、常に承認を取りにいく/与えるべきだ、という発想になることはないですし、かといって欲求自体を軽視するわけではもちろんない。そんな構えで人と相対しているように思います。
もう少し言うと、「いかに相手の承認欲モードを発露させないか?」を意図しながら関係性を編むし、仕事を設計します。相手の現状を無視したり抑え込んだり、直そう変えようとするのではなく、過度に承認を取りに行く回路そのものが作動しにくい関係をデザインする、という感じでしょうか。参考まで。
ということで、「Q.承認欲求の強い人と、どう関わるべき?」への回答は、
「どう関わるか」の前に、自分は「何を創造したいのか」「どう在りたいか」を問い直してみて!
です。
心優しい人ほど、相手の「認めて欲しい!」という叫びに、反応的に応答してしまいます。他者と常に家族的に接しようとする思想があるのかもしれませんね。それ自体は何の悪さもありませんが、自他境界がルーズになっている可能性を適切に疑いましょう。「ここで手を離したら、自分は不誠実になる」という恐怖が隠れているケースもあるかもしれません。また、成長欲の高い人ほど、相手の中に幼さを見るにつけ「あなたにも成長して欲しい!」と親心を発動させる傾向もあるように思いますが、相手の成長を願うことと、自律性を信頼し介入せずにいることとはちゃんと並立するんだ、ということもまた、思い出してみてください。
いずれにせよ、これらが「不健全な関係性」や「事業や活動そのものの目的阻害」「循環の停止」の直視を妨げている可能性を見逃さないことです。
誠実さや優しさとは「期待に応えること」とイコールではありませんし、「突き放すこと」もまた然り。短絡的な最適解など存在しない、動的で循環的な関係性のあわいに責任を持とうとすることは、とても成熟した態度の一つだと私は思います。
そして、これはもちろん、特別な才能の話でも、一部の人にだけ可能な在り方でもなく、自分自身の前提を見直し関係を問い直すことで、誰にでも少しずつ実装していけるもの。これまで反応的に応えてきた関係も、自分の意志で一つ一つ、編み直してゆける。
そういったフェーズに立っている人が、この問いに出会っているのだと思いました。
Q1.あなたはこれから、どんな前提を持ち、どんなふうに人との関わり合いを紡いでゆきたいですか?
Q2.そのことと、あなたの描きたい未来とは、どう関わっている?
このコラムが何か少しでも思索探究の深まるきっかけになれば幸いです!(おわり)
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