「強み」が言葉にならない時、決まっていないこと。- 言語化セッションの現場から

普段、1対1のセッションの中で頻繁に扱う「言語化」。私にとって言語化を支援することとは、その人の在りようを整え、創造へとひらく入口であり、出口でもあります。まだ実体の分からない感覚や思考に輪郭を与えること。見えてきたものを、自分や誰かに届く言葉へと形を変えていくこと。

そんな「言語化の現場そのもの」の一端をお見せできたら、読む方の思索や創造のヒントにもなるのでは?と思い、実際のセッションの一部をご本人の承諾のもと、コラム化してお届けしてみます!

今回は、ライフデザインコーチとして手帳活用を中心に女性向けサービスを展開しておられるAさん(40代・女性)の、「強みの言語化・ミニセッション(30分)」より。

■「どれが自分の強みなのか、分からない」

今回のテーマは、インスタで自己紹介をするための「強みや独自性」の言語化。「人から言ってもらうなど、何となく漠然とは思っているけれど、いざ言葉にしようとすると、どれを伝えたら良いか分からない」とのことでした。

長岡)じゃあまずは、人から言われたことがある強みから紐解いていきましょうか。自分でも「確かにそうかも」と思うことを教えてください。

Aさん)人の話をすごい真剣に聞くらしいです。あと、安心感が与えられるって言ってもらえるかな。手帳も私自身すごく好きなので、私と会った帰りに「手帳が使いたくなる」とか「手帳熱が上がる」みたいなことも言われます。

長)では今度は、自分で自分に対して「これも強みかもしれない」と思っていることを。うっすら思っている程度でも大丈夫です。

…と、まずは良い悪い/使える使えない等を判断せず、対話を重ねながら素材となる強みの候補を出していきます。

ざっと、こんなものが並びました。

■人の話を真剣に聞く
■安心感を与えられる
■手帳に苦手意識がある人も、手帳を使いたくなる/手帳熱が上がる
■自分時間を取って自分を大事にすることのロールモデルになれる
■ありたい理想の姿を実現することを応援できる
■頑張り屋さんの「手放しポイント」を一緒に探せる
■さまざまな働き方を経験しており、働き方に悩むお母さんの話を聞ける
■発達障害・不登校の子の子育て経験を話せる

…問題は「強みがない」ことではなく、この中の何を、どんなふうに自分の仕事における強みとして前に出すのか。丁寧に深掘っていった方が良さそうです。

■ロールモデルなのか?支援する人なのか?

強みの候補を出していた際、Aさんがご自身の「自分の時間をきちんと取れる」という特徴について話していた時のこと。

長)「自分の時間が取れる」ことを、仕事を提供するときの強みに言い換えるとしたら、何でしょう?

Aさん)自分を大事にするっていうことを、自分に対してやってあげられることかな。

長)それをお客さん側から見ると、どんな良いことがある?

Aさん)こういうふうに自分時間を作るんだな、っていうロールモデルにはなれるかも。

ここで少し分けて考えてみます。「自分を大事にする姿を見せられるロールモデルである」ことと、「相手自身が自分の時間を取れるよう、方法を一緒に考えたり、目標達成に向けてアドバイスしたりできる」こと。もちろん地続きではあれど、事業上の職能として、またはクライアントさんに提供できる価値としては別のこととして整理した方が良さそうです。

長)前半を聞いている限りでは、ロールモデルであるAさんと会うとやる気が出たり、手帳を使いたくなったりする、という所が提供価値なのかなという印象なんですけど、今後は、そこに加えて「本人ができるように支援する人」というところを言っていきたい感じです?

Aさん)今までは「私と会うとテンション上がります!」という感じの人が多かったけど、私と会わない期間にまた元の自分に戻ったら、あまり変わっていないなと思っていて。最近、家事や育児で沢山抱えている方に「じゃあ、どこを手放せるかな?」という話ができたんです。私がこうしてるからあなたもそうしなさい、というよりは、その人ができることを一緒に考える、ということを今後はもう少しやって行きたいかな。

話をしていく中で、Aさん自身の口から、

Aさん)やっぱり「応援したい」っていう気持ちがあるから、理想の自分になることを応援します、っていうところは自己紹介でも伝えていきたいかな。

という言葉が出てきました。さらに、「1人で全部背負っているような人の、手放せるポイントを一緒に探す」という言葉も。

最初は「自分にはどんな強みがあるか」を探していたAさん。対話を進めるうちに、

「私はどういう人なのか」

から、

「私は相手に対して、何をする人でありたいのか」

へと、少しずつ問いが動き出します。

■言葉が決まらない時、事業側に未決定部分がある

長)では今度は、インスタを見てくれている数千人のフォロワーさんの視点で考えてみましょう。Aさんのインスタに自己紹介の投稿がUPされたとして、どの強みや特徴について話してくれていると、「へぇ、そういう人なんだ!手帳の講座に行きたい!」と思えそうです?

Aさん)まずは「手帳に苦手意識がある人も使いたくなる」かな。やっぱり苦手な人がお客さんに多いので。あとは「ありたい理想の姿を実現する」のところ。

ここまででも、自己紹介文はある程度つくれそうです。ですが、私はもう一段先が気になりました。

長)正直なところ、その2つだけだと、広すぎて「他の手帳コーチと何が違うの?」となりそうじゃないです?

Aさん)うん。

長)手帳コーチって、似た仕事をしている人が世の中に沢山いる分野ですよね。つまりは世間にニーズがあるということですけど。その中でAさんを選んでもらえるかどうか、となると、言葉の分野で一番考えると良いのはターゲティングだと思いました。Aさんの「お客さん」は、誰なのか。「こんな人に来てほしい」あるいは「こんな人に私はすごく喜ばれる」というクライアントさん像が見えてくると、どの強みを前に出すかも変わってきますよね。

ここで、「強みが言語化できない」という最初の相談から、少し風景が違ってきます。

そもそも、事業における「強み」は、何もないところから単独で作り出して言葉にする、といったものではありません。事業は必ず、誰かとの「関わり」の中に存立するもの。誰に、何を届けるのか。その関係構造の中で、自分のどんな資質や経験、技能が価値として働くのか。

ですから、「誰に、何を届けるのか」の言語化と、「自分の強み」の言語化は、本来セットなのですね。

言葉が決まらない時、言葉だけを探し続けても決まらないことがあります。
表現しようとしているものを成り立たせている「関係」そのものを、もう一度見直してみる必要があるかもしれません。

セッションも終盤。羅列した候補のうち、太字部分の2つを核にして自己紹介を書くことに方針が定まってきました。

■人の話を真剣に聞く
■安心感を与えられる
■手帳に苦手意識がある人も、手帳を使いたくなる/手帳熱が上がる
■自分時間を取って自分を大事にすることのロールモデルになれる
■ありたい理想の姿を実現することを応援できる
■頑張り屋さんの「手放しポイント」を一緒に探せる

■さまざまな働き方を経験しており、働き方に悩むお母さんの話を聞ける
■発達障害・不登校の子の子育て経験を話せる

■バラバラだった経験が、一つの像に束ねられる

対話の中で、Aさんが別々のものとして挙げていた「発達障害や不登校の子を持つお母さん」「働き方に悩むお母さん」にも、共通するものも見えてきました。

長)こう整理したらどうです?この「頑張り屋さん」の中に、「発達や不登校の子のママ」もいるし、「働き方に悩んでいるお母さん」もいる、と。

Aさん)あーー。

長)今回自己紹介の投稿をする時には、発達とか不登校とかは言わなくて良いかもしれないですね、各論だから。今日ポイントになっているクライアントさん像は、「頑張り屋さん」というのが大きな括りですよね。

Aさん)うんうんうんうん。整理された、すごい納得感ある!その中に入るね。

現象のレベルでは別々に見えていたものが、「頑張り屋さん」というもう一段上の像で束ねられた。こういう時、本人から見えている顧客像そのものや自身の経験値の構造も、少しだけ変化します。

「誰」を相手にしているのか。
その人たちに共通するものは何なのか。
自分は、その人たちに対して「何」を担うのか。

そこが見えてくると、自己紹介の言葉だけでなく、発信やサービス設計まで連動して少しずつ全体性が整い始めます。

■「強みを決めたい」の、その先へ

長)今後、ターゲティングについては一度「頑張りたい人」というのを軸に考えてみると良いかもしれないですね。世の中には「もうこれ以上頑張りたくない、手を抜いて休みたい人」とか「夢とか目標なんていらない人」も沢山いるけど、そういう方はAさんの手帳セッションに来ないでしょうし。でも、「本当は、もうちょっと自分のことを頑張りたいな」とか、「実は、手を抜くばかりじゃ嫌なんだよな…」みたいな人も世の中に沢山いますからね。…というふうに、届けたい人(ターゲティング)と強みの表現って、セットで深まっていくイメージ。

Aさん)うんうん。

長)そのイメージだけ持っていただければ、今日は十分なんじゃないでしょうか。

Aさん)すごい整理できました!最近なんとなくこうしていけば良いのかな…?と思ってたところが言語化できた感じがしました!

長)素晴らしい。自分の中の種のような部分を言語化できると、すごく事業フェーズとしても進むものがあるのでね。機会あればまたサポートさせてください!

(セッションはここまで)

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今回の30分で、「ありたい理想の姿を実現することを応援できる」「頑張り屋さんの手放しポイントを一緒に探せる」という、今のAさんにとって核になりそうな言葉が見えてきました。

もちろん、これだけで全てが完了、というわけではありません。

例えば次に扱うと良さそうなのは、「頑張り屋さん」とは具体的にどんな人なのか。「応援する」とは実際、何をすることなのか。・・・そういった言葉の定義が深まれば、提供するサービスの形や外に出す言葉も、さらに輪郭がはっきりしてゆきそうです。人に伝わる言葉づくりの前に、まず一度「何を、誰に対して届けるのか」そのものを整えることを私からはおすすめします。

言語化が進むと、次なる思索テーマも豊かに浮かびあがってくる。

今回見つかった言葉を足場に、Aさんの事業がこの先どう育っていくのか。そこもまた、楽しみなところです^ ^

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※今回のセッションの対話記録(逐語録)です。実際のやり取りをもう少し追ってみたい方はどうぞ!